『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった一年間のこと』 花田菜々子 河出書房新社
おはようございます。今日も書評をします。
めったにエッセイは読まないんですが…
【出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった一年間のこと】花田菜々子
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと [ 花田 菜々子 ]
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 人文・地歴・哲学・社会 > 文学 > その他
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,404円
概要
夫に別れを告げ家を飛び出し、宿無し生活。どん底人生まっしぐらの書店員・花田菜々子。
仕事もうまく行かず、疲れた毎日を送る中、願うは「もっと知らない世界を知りたい。広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい」。
そんな彼女がふと思い立って登録したのが、出会い系サイト「X」。プロフィール欄に個性を出すため、悩みに悩んで書いた一言は、「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」———。
実際に出会った人達は魑魅魍魎。エロ目的の男、さわやかに虚言癖の男、笑顔がかわいい映像作家……時には自作ポエムを拝見し、かわいい女子に励まされ、優しい女性のコーチングに号泣しながら、今までの日常では絶対に会わなかったような人達に、毎日毎日「その人にぴったりの」本を紹介。
え、もしかして、仕事よりもこっちが楽しい?!
サイトの中ではどんどん大人気になる菜々子。
だがそこに訪れた転機とは……。
これは修行か? 冒険か? 「本」を通して笑って泣いた、衝撃の実録私小説!
プロローグ 2013年1月、どん底の夜0時
第1章 東京がこんなにおもしろマッドシティーだったとは
第2章 私を育ててくれたヴィレッジヴァンガード、その愛
第3章 出会い系サイトで人生が動き出す
第4章 ここはどこかへ行く途中の人が集まる場所
第5章 あなたの助言は床に落ちてるホコリみたい
第6章 私が逆ナンを身につけるまで――――そしてラスボス戦へ
第7章 人生初のイベントは祖父の屍を越えて
エピローグ 季節はめぐる、終わりと始まり
あとがき 2017年秋、本屋の店先で
サクラ・ヤラセ一切なしで日本最大級の会員数を誇る本物の出会い!ハッピーメール(18禁)
こんな人にオススメ
ビジネス色を求めない、緩めの小説風エッセイを読みたい人
何かやりたいことが漠然としてて見つからない人
今まで同じライフサイクルのなかで生きてきて物足りなさを感じ、刺激を求める人
内容・感想
- 「出会い系サイト」に映る生々しい感情の描写
しつこくまた会いたがったり、なんとかセックスの話に持ち込もうとするおじさん特有のねっとり感には正直辟易したが、仕事の話をするときはセンシティブで、繊細に話している面も感じられた。それから、性格や職業からしても、古典的なものよりは今っぽいもののほうが好きそうな感じもする。
主人公の菜々子さんが、日常への物足りなさや夫とのいさかいを避ける衝動ではじめた出会い系サイトXのなかで、
たくさんの人たちと出会っていくのですが、
そのなかでも、やはり単純にエロ目的でやってくるのが多いだろうと僕は思っていました。
もちろん初めの二人はそういうタイプで、描写から、リアルなカフェの様子や
菜々子さんの感情のうねりが生々しく伝わってきます。
まるで同じカフェの違う席から菜々子さんを眺めているような感覚が、
物語のなかへと自分をまきこんでいきます。
- 複雑な境遇の中でうごめくリアルな葛藤
だけど遠藤さんに明るく「次は何やるの?」って聞かれて黙り込んでしまったことや、ユカリさんとのやりとりのなかであんなに泣いてしまったこと…いろんなことが1ミリずつ自分を波打ち際に押し出していた
菜々子さんが使う独特の比喩表現も、自分にはイメージを伴う奥行きがどことなく感じられて好きです。
Xを始めていろんなひとに出会い、実際に恋愛に発展しそうだったり、気の合う女の子と朝まで飲んだり…と楽しい生活の裏側で、
直視しなければいけない現実にも時々ひきもどされる。
夫との離婚の問題や祖父の死亡、会社への帰属意識など、
解決しなければいけない問題を回避しているつもりでも
現実のどこかで影がちらつくという描写ですが、
なんとなく、自分に投影してしまいます。というのも、普段こうやってブログ書いたり、
お酒を飲んだり、レジャーしたり…だけど、自分が将来やりたい像に一歩も近づいていないじゃないかと、葛藤する自分にすごく似ています。
そんなことを思いながら読んでいましたが、菜々子さんがそのしがらみを乗り越えるのを読むと、
自分も少し背中を押されたような、そんな気持ちになります。
是非読んでみてくださいね!!ではでは!